第6回日本不安障害学会学術大会の開催にあたって
平成26年2月1日(土)・2日(日)、東京大学山上会館・伊藤謝恩ホール(本郷キャンパス内)において、第6回日本不安障害学会学術大会を開催させて頂きます。
パニック症や社交不安症、強迫症、PTSDなどの不安症(不安障害)とその類縁疾患は、頻度の高さ、罹病期間の長さ、生活への障害、そしてうつ病等様々な精神疾患の合併率の高さから、国民の健康と生活に大きな被害を与えています。本大会ではこれらの疾患の理解を深めるうえで、各参加者の関心とご興味を考慮し、以下の4つの観点から講演やシンポジウム、一般演題などの準備を進めて参りました。
研究者・臨床家の皆様に:本学会の大きな目的は、言うまでもなく不安症の臨床と研究に関わる新たな成果を学ぶことです。このため3人の海外からの研究者の特別講演、6つの教育講演と多数のシンポジウムを企画いたしました。海外からの3人の演者には、PTSD、パニック発作と睡眠、生活習慣・運動と不安症との関係にそれぞれ焦点をあててお話頂きます。教育講演では、恐怖記憶の脳内メカニズム、不安症の薬物療法、子どもの不安・抑うつ、がんにおける不安の問題のほか、認知行動療法の極意から初心者にも分かる基礎理解までをお二人の先生に分担してご講演頂きます。
若手・学生および、さらなるステップアップを考える皆様に:若手・学生の教育から中堅・ベテランのさらなる成長に貢献することも、本学会の大きな目的です。今大会では(1)初学者が必要とする基本知識の習得と復習、また(2)若手・中堅のさらなる成長に役立つ講演・シンポジウムを準備いたしました。教育講演の演者の先生方には、先端的知識の紹介に加え、初学者から中堅の皆さんの勉強となるような内容を含めたご講演をお願いしてございます。またシンポジウムも、普段の臨床・研究活動の助けとなる内容を多数準備頂いております。この中には認知行動療法や生活習慣に関する複数の企画、新しい診断分類(DSM-5)、脳画像、発達障害と不安、身体疾患や日常の臨床活動に焦点をあてた企画のほか、当事者の声を直接うかがう企画が含まれています。
学校保健および思春期・青年期の臨床に関心をお持ちの皆様に:本学会のもう一つの大きな目標は、研究者、臨床家とともに現場で罹患者の支援を担う様々な職種の人々が交流し、情報共有を行うことです。相互の知識・意識と状況を理解し、研究・臨床の発展と現場支援それぞれの発展に寄与することを目指しています。この点について、今大会では特に学校現場で子どもと若者の支援にあたる教育関係者と臨床家・研究者との交流に焦点をあてました。不安症の多くは思春期から始まり、児童生徒の生活・成長の大きな妨げとなっていますが、専門家側の現場に関する知識と認識、教育関係者側のもつ情報と知識は、いずれも十分とは言えないのが現状です。この問題の改善の契機となることを願い、今大会では2日目(2月2日)に専門家と学校関係者の相互交流のためのシンポジウム、不安症や関連疾患、その治療法に関する基本知識を分かりやすくお伝えする講演(教育講演5,6)を用意したほか、一般演題にも学校保健のカテゴリーを設けて多数の演題のご応募を頂いております。教育関係者・研究者のみでなく、 日々の臨床で児童・生徒が最もお世話になっている開業クリニック・総合病院の皆様にも得非ご参加頂ければと思います。
新しい診断分類と日本語病名に関心をお持ちの皆様に:この挨拶文では「不安障害」「強迫障害」「パニック障害」ではなく「不安症」「強迫症」「パニック症」等と記したことにお気づきでしょうか?これは昨年公表された米国精神医学会の新しい診断分類DSM-5の日本語訳の議論に基づいたものです。「障害」から「症」への病名変更には、「障害」という言葉に伴いやすい誤解を避け、精神疾患に伴いがちな偏見を軽減しようと、本学会から日本精神神経学会に提案して進められたものです。2日(日)のシンポジウム13では、DSM-5の紹介とともに、この日本語病名の変更についても議論いたします。
多くの皆様のご参加を、心からお待ちいたしております。
第6回日本不安障害学会学術大会
大会長:佐々木 司
(東京大学大学院教育学研究科健康教育学分野)